「その宿泊税、何に使われてる?」特別徴収義務者として北海道議会に再び陳情を提出

令和8年(2026年)4月から北海道で導入された宿泊税。

日々の営業のなかで、宿泊客(納税者)から直接税金を預かり、宿泊者の代わりに行政に納める「特別徴収義務者」として、先日、北海道議会議長宛てに陳情書を提出した。

実は、道議会への陳情は今年の3月に続いて2回目である。

前回の陳情:「取るなら公平に取れ(不法業者の排除)」

今年3月に出した1回目の陳情では

「宿泊税を徴収するならば、税の公平性を担保すべく不法民泊・違法業者の徹底排除を行え」

という趣旨を強く訴えた。

【北海道宿泊税・行政交渉の終わり】行政と話しても無駄と判断し次のアクション
私の立場この問題に踏み込む前に、私自身の立場をはっきり述べておきます。宿泊税には反対 (そもそも全ての増税に反対)観光振興の名のもとに導入される宿泊税ですが、実態は宿泊者(=宿泊事業者)への単なる増税です。宿泊者に経済的な負担を増やす一方、…

真面目に許認可を取り、ゲストから税をお預かりして納める事業者が馬鹿を見させられ、地下に潜む違法業者が野放しにされるような状況では、納税者の理解など得られるはずがない。まずは徴収側の足場を固め、公平性を担保せよというのが前回の主旨であった。

その後、道議会で宿泊税の導入が決定された際にも、私は即座にブログで苦言を呈してきた。決まるやいなや、本来の目的とは乖離した既得権益化・バラマキ事業への流用が目に見えて始まっていたからである。

北海道宿泊税の闇:KPIなき巨額予算と「アイロン補助」にみる行政の怠慢――不法業者を利する制度の欠陥を問う
プロローグ:届いたのは「核心を避けたゼロ回答」私がこれまで「宿泊税の使途の妥当性」と「課税の公平性」について突きつけてきた問いに対する、道側の公式な見解が届いた。全て同じ担当部署なので3件まとめての回答になっていた。しかし、その内容は驚くべ…

そして今回、実際に徴収が始まった現場で改めて突き当たったのが

「で、現場で預かったその税金は何に使われているのか?」

という使途の問題である。

今回の陳情:「その使い道、現場も納税者も納得できない」

公表されている活用事業(「令和8年度 宿泊税を活用する事業」)を精査したところ、現場で税を預かる立場として到底見過ごせない使途が散見された。 特に問題だと感じているのは以下の3点である。

  1. 一般財源の付け替え(第2の財布化)
    入込客数調査(約6,400万円)や観光案内所の移転経費(約3,100万円)など、本来行政の一般財源で賄うべき基礎的な経費に充当されている。
  2. 特定事業者や一部個人への公費投入・既得権益化
    「親子ツアー」のような特定参加者のみが楽しむレジャー事業や、「アウトドアガイド研修」(264202号事業等)といった本来民間が自己責任で行うべき人材育成への充当。
    なぜ何万人もの宿泊客が払った税金で、特定の人の遊びや事業者の研修代を負担しなければならないのか。
  3. 成果(KPI)の欠如
    「納税者の受益」という都合の良い言葉ばかりで、客観的なゴールや数値目標が一切示されていない。 仮にゲストから「何のための税金ですか?」と問われた際、今の北海道の使い道では自信を持って説明ができない。

道議会への陳情は「回覧のみ」という現実

正直に言って、北海道議会における陳情は議員への「回覧」で処理されることがほとんどである。委員会で深く審議される請願とは異なり、これを出したからといって明日すぐに道政が変わるような大きな影響力はないだろう。

それでも、私は行動を起こすことに意味があると思っている。声を上げなければ「現場の事業者も、宿泊客も、この使い道に納得している」とみなされてしまう。

特別徴収義務者として現場で感じる不信感、真っ当な納税者の怒りを、公式な文書として議会に記録に残しておくこと。この積み重ねこそが、行政の暴走に対する牽制になると信じている。

提出した陳情書の全文

今回、実際に北海道議会宛てに提出した陳情書の全文を掲載しておく。

陳 情 書

北海道議会議長 伊藤 条一 殿

【陳情の件名】
北海道宿泊税活用事業における一般財源の付け替え防止、特定事業者への補助抑制および「納税者の受益」に係る客観的評価指標(KPI)の義務付けに関する陳情

【陳情の要旨】

1.一般財源との明確な区分と付け替え防止ガイドラインの策定
行政が本来担うべき基礎的統計調査や既存施設の改修・移転費用等の一般会計事業について、宿泊税財源への付け替え(代替充当)を原則禁止とする明確な基準を策定・公表すること。

2.民間・事業者支援事業における公正性の確保と既得権益化の防止
特定事業者の設備投資補助(「観光地づくり加速化補助金」等)や、本来事業者が自費で行うべき研修・人材育成事業への公費投入について厳格な制限を設け、補助対象選定の透明化と事後検証を徹底すること。

3.客観的評価指標(KPI)の導入と事後評価の義務付け
宿泊税を充当するすべての事業について、単なる事業実施(動画作成数や講習開催数等)に留まらず、旅行者の満足度変化や混雑緩和度合い等の定量的な効果指標(KPI)を設定し、毎年度その結果を検証・公表すること。

4.第三者による使途検証委員会の設置
宿泊税の充当事業の選定および成果検証において、納税者代表(旅行者・宿泊者側の視点を持つ有識者等)を含めた公開の評価機関を設置すること。

【陳情の理由】
陳情者は道外在住者でありますが、北海道内において民泊施設を経営しており、令和8年4月より導入された北海道宿泊税における徴収・納入を担う「特別徴収義務者」であります。日々の営業活動の中で宿泊客(納税者)から直接税を徴収し行政に納める立場にあるからこそ、その使途の正当性や対価性については極めて重大な関心と責任を感じております。

しかしながら、公表された活用事業一覧を精査すると、本来一般財源で賄うべき行政の基礎調査費や既存施設の維持管理費用への充当、並びに特定の民間事業者や一部参加者への便宜供与としか言えない使途が散見され、現場で宿泊客に向き合い徴収を行っている立場として到底納得できるものではありません。

例えば、「北海道観光入込客数調査事業費(64,359千円)」のような基礎的統計調査や、「北海道さっぽろ『食と観光』情報館運営費(31,548千円)」のような既存案内所の移転設計費等、従来一般会計で処理されるべき事業への代替充当が行われており、実質的な「一般会計の第2の財布化」となっている疑義がぬぐえません。

さらに容認しがたいのは、「親子ツアー」をはじめとする特定参加者のみにレジャーや体験の機会を提供する事業や、「アウトドアガイド資格制度・研修事業」のような特定事業者の支援施策です。本来、特定の個人や親子が楽しむツアーの費用は自費で負担すべきであり、事業者の育成も民間市場の自己責任において行われるべきものです。特別徴収義務者が宿泊客から預かった貴重な税金を、何ら還元されない一部のイベントやツアーに浪費することは、「税の対価性」を根底から踏みにじる行為であり、公金を投じた娯楽の提供・受託事業者への利権還元に他なりません。このような不公平かつ不透明な事業選定は、現場で税の説明を求められる事業者および真っ当な納税者に強い嫌悪感と不信感を抱かせるものです。

また、全体予算の約4割を占める「観光地づくり加速化補助事業費(945,187千円)」等における民間補助のあり方も含め、道が主張する「快適でストレスの少ない滞在」等の受益概念は主観的に留まっており、事業の成果を測定する客観的なゴールや数値目標(KPI)が全く提示されておりません。

現場で税を徴収する特別徴収義務者としても見過ごすことのできない不透明・不公平な使途を厳しく改め、課税の透明性と正当性を確保して旅行者および道民の納得感を得るため、上記の通り陳情いたします。

徴収の公平性を求めた今年3月、そして使途の正当性を求めた今回。
これからも特別徴収義務者としての責任を果たしつつ、預かった税金が正しく使われるよう、現場から声を上げ続けていく。

タイトルとURLをコピーしました