騒音・ゴミ問題を起こしているのは誰?行政は宿泊施設の実態を把握しているのか

はじめに:私は正規事業者としてこの問題を考えている

私は、北海道旭川市に必要な届出を行って営業している、住宅宿泊事業法に基づく民泊の正規事業者である。

民泊を運営していれば、不特定多数の宿泊者が利用する以上、騒音やゴミ出しなど、日々細かな問題が起こる。私自身も、そうした問題が起こり得ることを前提に、できる限り現状を把握し、問題が発生すれば速やかに対策している。現地管理業者についても、24時間以内に駆け付けられる体制を整えている。

つまり、「民泊では問題は起こらない」と考えているわけではない。重要なのは、問題が起きたときに、いかに早く把握し、いかに早く対応するかである。

だからこそ、今回問題提起したいのは、地域で発生している騒音やゴミなどの問題について、

「その問題を起こしている宿泊施設の実態を、行政は本当に把握できているのか」

ということである。

問題を起こしているのは、正規事業者なのか不法業者なのか

宿泊施設をめぐる問題を考えるとき、まず明確にしなければならないことがある。それは、問題を起こしている施設が、

  • 住宅宿泊事業法に基づく届出を行った民泊
  • 旅館業法の許可を受けた簡易宿所

といった正規の宿泊事業者なのか、

それとも、

  • 必要な届出や許可を受けていない
  • 住宅宿泊事業法の180日制限を超えて営業している疑いがある
  • 届出・許可の内容と実際の営業が異なる

などの闇・不法・不適正な営業なのか、ということである。

正規事業者であっても、宿泊者による騒音やゴミなどの問題は発生する。その場合は、事業者が問題を把握し、適切に管理・対応する必要がある。

一方で、不法・不適正な営業であれば、行政が実態を把握し、必要な取締りを行うべき対象である。したがって、まず必要なのは、

「宿泊施設で問題が起きている」

という話ではなく、

「どの施設で、誰が、どのような営業を行い、その問題を起こしているのか」

行政が明らかにすることである。

行政は発生源を「特定」しているのか

騒音やゴミの苦情が寄せられたとき、行政はその発生源を特定しているのか。そして、その施設が、

  • 正規の民泊なのか
  • 正規の簡易宿所なのか
  • 届出・許可内容と実態が異なるのか
  • そもそも無許可・無届なのか

を確認しているのか。

もし行政がそこまで把握していないのであれば、問題の本質は見えてこない。本来必要なのは

苦情を受けることだけではなく、発生源を特定すること

である。さらに

営業者や管理者を特定し、営業実態を確認すること

である。

正規事業者であれば、必要に応じて管理状況の改善を求める。不法営業であれば、法令に基づいて調査・取締りを行う。

この区別がなければ、正規に営業している事業者まで一括りにされてしまうが、少なくても現時点においては、この区別を正しく行った上でSNS等で発信されている情報はほとんどないと感じている。

行政は現行制度でも、もっとできることがある

では、行政には何もできないのか。私は、そうではないと考える。ここは北海道や旭川市だけの話ではない。現行制度そのものを見れば、行政にはすでに一定の権限が与えられている。

問題が発生した場合、行政がまず行うべきことは、次のような一連の対応である。

① 苦情・通報を受け付けるだけで終わらせない

騒音やゴミなどの苦情を受けた場合、単に件数を集計するだけでは不十分である。いつ、どこで、どのような問題が発生したのかを記録し、継続的な問題なのか、一時的な問題なのかを確認する必要がある。

② 問題の発生源を特定する

苦情が発生した地域や建物を確認し、問題の発生源となっている宿泊施設を特定する。「宿泊施設が原因らしい」という段階で終わらせず、具体的な施設まで特定することが重要である。

③ 営業者・管理者を特定する

施設が特定できたのであれば、誰が営業しているのか、誰が管理しているのかを確認する。正規事業者であれば、届出や許可の情報と照合する。

④ 正規事業者なのか、不法・不適正な営業なのかを確認する

その施設が、

  • 住宅宿泊事業法に基づく届出を行った民泊なのか
  • 旅館業法の許可を受けた簡易宿所なのか
  • 届出・許可の内容と実際の営業が一致しているのか
  • そもそも無許可・無届の営業なのか

を確認する。ここを確認しなければ、正規事業者と不法業者を区別できない。

⑤ 営業実態を調査する

届出や許可が確認できたとしても、それだけで問題が解決するわけではない。実際にどのような営業が行われているのか、届出・許可の内容と実態が一致しているのかを確認する必要がある。特に、住宅宿泊事業法の180日制限を超えた営業や、許可・届出の内容とは異なる営業が行われていないかについても、必要に応じて確認すべきである。

⑥ 正規事業者には改善を求め、必要に応じて行政処分を行う

正規に届出・許可を受けた事業者に法令違反があればまずは改善を求める。改善されない場合や、違反の内容・程度によっては、法令に基づく行政処分を検討する。

住宅宿泊事業法では、違反の内容や状況に応じて、業務改善命令や業務停止命令などの制度が存在する。実際に豊島区では、住宅宿泊事業法に基づく業務改善命令等を行っている。2026年4月には、83事業者・202施設に対する業務改善命令を公表している。つまり、正規事業者であっても、行政が法令に基づいて対応する仕組みは存在する。

⑦ 不法業者には、行政だけでなく関係機関と連携して対応する

無許可・無届などの不法営業が確認された場合、行政は「注意して終わり」にするのではなく、法令に基づいて対応する必要がある。違法性の確認や証拠の収集を行い、必要に応じて警察などの関係機関と連携する。悪質な違法営業については、刑事事件としての対応につなげることも考えられる。行政だけですべてを解決できないのであれば、関係機関と連携すればいい。

⑧ 問題が解決したかを確認する

行政が注意や改善命令を行ったとしても、それで終わりではない。その後、本当に問題が改善されたのかを確認する必要がある。

  • 同じ施設から再び苦情が発生していないか
  • 改善を求めた内容が実際に履行されているか
  • 違反状態が継続していないか

必要であれば、再調査や追加の対応を行う。

この一連の流れを整理すると、行政がやるべきことは明確である。

① 苦情・通報を受け付ける

② 問題の発生源を特定する

③ 営業者・管理者を特定する

④ 正規か不法かを確認する

⑤ 営業実態を調査する

⑥ 正規事業者には改善を求め、必要に応じて行政処分を行う

⑦ 不法業者には関係機関と連携して対応する

⑧ 問題が解決したか確認する

これが、行政が現行制度の下でまず行うべき基本的な対応ではないか。

もちろん、行政が独自の判断だけで、すべての施設を直ちに営業停止にしたり、すべての不法業者を刑事罰に問えるわけではない。違反事実の確認、証拠の収集、法的要件の充足など、適正な手続が必要である。しかし、

  • 「処分できない」ことと、「調査できない」ことは別である
  • 「営業停止にできない」ことと、「違反の有無を確認できない」ことも別である
  • 「刑事罰を科せない」ことと、「警察などの関係機関と連携できない」ことも別である

不法営業かどうか分からないのであれば、まず調査して確認すればいい。

正規事業者かどうか分からないのであれば、届出・許可の有無を確認すればいい。

問題が繰り返されているのであれば、営業実態と改善状況を確認すればいい。

法令違反が確認されたのであれば、その違反の程度に応じて、行政処分や関係機関との連携を含め、法令に基づく対応を検討すればいい。重要なのは、行政が「苦情を受け付ける」だけで終わらせないことである。

苦情を受ける。

発生源を特定する。

営業者を特定する。

正規か不法かを確認する。

営業実態を調査する。

違反があれば、法令に基づいて対応する。

必要であれば、関係機関と連携する。

そして、問題が解決したか確認する。

ここまでやって初めて、行政がその問題に真正面から取り組んだと言える。それを十分に行わないまま「不法業者は把握が難しい」「取締りには限界がある」「新たなルールが必要だ」と結論づけるのは早すぎる。まずは、現行制度でできることを最大限にやるべきである。

制度がないからできないのではない。

権限がないからできないのでもない。

少なくとも、現行制度の中には、正規事業者に対する行政処分や、不法業者を特定して関係機関と連携するための仕組みがすでに存在している。だからこそ問いたい。

行政は、その制度を本当に最大限活用しているのか。

できることを、まずやっているのか。

私は、そこから始めるべきだと考える。

なぜ私がこの問題を問題視するのか

私は東京都民であり、北海道民でも旭川市民でもない。それでも、北海道や旭川市を訪れて宿泊すれば宿泊税を負担する。また、私は旭川市で正規に民泊を運営する事業者として、宿泊税の制度の中で事業を行っている。

正規事業者には宿泊税の負担を求めながら、その一方で不法・無許可・無届などの事業者が十分に把握・取締りされていないのであれば、税の公平性や公正な競争環境に疑問を持つのは当然である。

私はこの問題について、これまで北海道や旭川市に対して問題を提起し、不法業者の取締りについて働きかけてきた。さらに、北海道議会と旭川市議会には陳情を提出している。旭川市では陳情が付託された一方、北海道では具体的な対応が確認できていない。そこで次のステップとして、主要会派にも請願への協力を依頼しているが、現時点で具体的な反応はない。

私が問題にしているのは、行政や議会に対して「民泊を規制するな」と主張することではない。

行政が現行制度でできることを十分にやらないまま、問題の実態も把握せず、正規事業者にさらなる負担を求める方向に進むことへの疑問である。

まず、やるべきことがある。

規制強化を議論する前に、行政は現行制度で何をやったのか

私は、規制強化そのものを否定しているわけではない。問題は、その順番である。まず必要なのは、

  1. 現状を把握する
  2. 問題の発生源を特定する
  3. 正規事業者と不法・不適正な営業を区別する
  4. 現行制度でできる取締りを徹底する

ことである。その結果として、

  • 現行制度で何ができたのか
  • 何ができなかったのか
  • どこに制度上の限界があったのか

を明らかにする。

その上で、本当に現行制度では足りない部分があるのであれば、必要に応じて法改正や条例改正、制度変更を検討する、これが本来あるべき順番である。

規制強化をするかどうかを議論する前に、まず問うべきことがある。

行政は現行制度で何をやったのか。

  • 苦情を受けたのなら、発生源を特定したのか
  • その施設が正規なのか、不法なのか確認したのか
  • 営業者や管理者を特定したのか
  • 法令違反がないか調査したのか
  • 違反があれば、現行制度に基づいて対応したのか

まず、そこまでやったのか。

もし、まだ十分にやっていないのであれば、答えは一つである。

まずは、やれ

新しいルールを作る前に、今あるルールを使ってやれることをやる。行政がやるべきことをやり、それでも対応できない問題が残ったときに初めて、

「現行制度ではここが足りない。だから、ここを改正する必要がある」

という議論になるはずである。

まとめ:規制強化の前に、まずはやるべきことをやれ

騒音やゴミなどの問題を解決するために、まず必要なのは、問題の発生源を明らかにすることである。

それが正規事業者なのか。

それとも闇・不法業者なのか。

その線引きができていない状態で、宿泊施設全体のルールだけを厳しくしても、本当の問題解決にはつながらない。

行政には、現行制度の下でもできることがある。まずは問題の発生源を特定し、営業実態を把握し、正規事業者と不法・不適正な営業を区別する。そして、現行制度でできる取締りを徹底する。その結果として、現行制度では対応できない問題が明確になったのであれば、そこで初めて必要なルール変更を検討すべきである。

「ルールを守っている人にだけルールを厳しくしても、ルールを守っていない人は取り締まれない。」

私は、現状のままいたずらにルールだけ強化しても問題は何も解決しないと考える。必要なのは、

規制強化より先に、まず現状把握と取締りを

正規に営業する事業者が適正に営業し、適正に税を負担する一方で、不法業者が放置されることのない環境をつくる。そのために、行政がまずやるべきことがある。

  • 現行制度でできることをまだ十分にやっていないのなら、まずはやれ
  • 新しいルールを作る前に、今あるルールを使え
  • 規制を強化する前に、まず現行制度でできることをやれ

それでも足りないことが明らかになったなら、そのときに初めて、必要なルール変更を議論すればいい。私は、それが行政に求められる本来の順番だと考える。

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