民泊開業を目指して
個人・法人として不動産業をメインに、さらにサブでちょこちょこビジネスを立ち上げていた私。しかし、2019年に発覚したとある金融機関の不正融資事件の被害者となってしまったことから最悪は「破産」または「個人再生」というところまで追い詰められていました。悪夢のような状態が約3年続きましたが最終的には崖っぷちで何とか踏みとどまり、現在は再起に向けて前を向いて走り続けています。
民泊を狙った理由
破産や個人再生にまで至ることはなかったものの手持ち資金はカツカツ。ゼロではなかったものの23区内に築古狭小のワンルームマンションですら買えない程度の自己資金しかありませんでした。
限られた自己資金の中で新規で立ち上げられるビジネスを探し続ける日々。当初はスモールM&Aを中心に検討していましたが、売却価格が安くても専門家の手数料がべらぼうに高いものばかり。それならと専門家が入っていない案件をチェックするも今度はロクなものがない等々、そうそう美味しい案件は転がっていませんでした。
私の今までの経験からとっつきやすいのはやはり不動産。しかし、上記のトラブルから私の信用情報は一旦真っ黒となってしまったため、当面の間、金融機関から融資を受けることは不可能です。かと言って手持ち資金ではよほど僻地の物件ぐらいしか買えません。しかも買ったところで修繕費用等が捻出できない、それでいて利回りも期待できない、そんなことではやる意味がありません。
ただ、それまでの経験や知識から「今後はできるだけ資産を持たない」という信条を持ったことから不動産に絡むビジネスを行うにしてももはや「保有」することは考えていませんでした。保有しないということは賃貸。賃貸であれば購入費用必要なし、修繕費用もあまりかからないはず、そして毎年の固定資産税もなし。ならば
賃貸物件の転貸借によって利益を出せるビジネスの構築
そう考えた結果、至った結論が民泊(またはレンタルスペース)でした。民泊をやりたいからスタートしたのではなく、資産を持たないビジネス→賃貸の転貸借→民泊という流れです。
開業エリア
円安xインバウンドで一部地域ではとてつもなく潤っている現在ですが、人気の観光地や大都市の民泊はとっくに飽和状態、完全なレッドオーシャンと化していると捉えています。今からでも開業しようと思えばできるでしょうが集客は正直かなり難しいでしょう。Airbnb等の宿泊予約サイトで物件を検索する際、数ページ先にしか表示されないのであれば誰の目にも止まらず、利益を出せる可能性はとてつもなく低くなります。
目的は開業することではなく利益を出せるビジネスを立ち上げること、そう考えるとレッドオーシャンのエリアへの進出(例えば北海道なら札幌、関西なら京都や大阪)は避けるべきと判断、そこで狙ったのが「旭川」でした。
北海道第二の都市でありながら外国人観光客はまだ少なく民泊物件も現時点では限られていることから検索上位の可能性もまだあるこの地を狙うことにしました。そんな理由から過去に何度か旭川に出張していたのでした。
本音を言えばもっと道東を狙いたかったのですが、まず宿泊施設運営者が見つかりませんでした。そして賃貸物件そのものも数が少なく、その中から転貸借可能な物件を見つけ出すのはかなり難しいということから現時点では諦めることにしました。
現地のパートナー探し
いくら私が「旭川で民泊を開業したい」と騒いだところで、それを実現するためには現地でサポートしてくれるパートナーとなる「宿泊施設運営者」が必要となります。遠隔地で民泊を開業するにあたっては立ち上げ前の準備から日々の業務まで完全に丸投げ、現地で直接動いてもらうのがこの宿泊施設運営者となります。
宿泊施設運営者にやってもらうことは
- 現地行政絡みの許認可取得
- 部屋のデザイン作成
- 家具家電等の選定、設置
- 複数の予約サイトへの登録
- 宿泊者の管理
- 物件の維持・管理
宿泊施設運営者として既に実績があり旭川もサポート可能、そんな業者を探した結果、2023年6月に信頼できそうなところと繋がり協業することになりました。
民泊開業を目指すための注意事項
そもそも北海道で民泊を開業するにあたっては条例の制限を受けます。その条例において一番大きな点は「用途地域によって営業できる日数が限られていること」があげられます。最悪のケースでは年間50日しか営業できません。私は民泊新法や北海道の条例によって年間180日営業できるエリア、かつ、さらに追加の許認可を取れば簡易宿所として年間365日稼働できるエリアをターゲットとしました。まずは短期間で開業、その後の様子を見て可能性があると判断できれば簡易宿所に転用と考えています。
物件探し
宿泊施設運営者も決まり、あとは私が物件を見つけてくるだけ、しかしそこからが大変でした。とにかく物件が見つかりません。ネットには日々いくつもの物件が新規で掲載され続けていましたがほぼ100%「民泊転用不可」。
特に大手仲介業者はこぞってNG。仕方なく小規模で地域密着で活動しているような仲介業者のサイトで物件を探しては打診の繰り返し、それでも100%NGでした。そんなことを2ヶ月ぐらい繰り返してきた中でやっと複数の「転用可」の物件にたどり着きました。しかし、転用にあたっていくつかの条件が付いてきたりで結局は1軒のみになってしまいました。その物件に関して宿泊施設運営者に売上や経費のシミュレーションをしてもらったところ、ビジネスとして成立しそうな数値が出てきました。今後さらに詳細を詰めるためには一度内見しておく必要があると判断、その物件を見に行ったのが1回目の出張、2023年9月でした。
物件は旭川駅前から5km程度離れた丘陵地のこじんまりとした住宅街の中にありました。ゆとりある区画でしたが外観は正直かなりくたびれている印象。ただ、内装はフルリノベーション済みで洗練されていました。
と思ったのもつかの間、リノベされていたのは1Fリビング、ダイニング、キッチンだけ。それ以外の居室はクロスが汚れていたり破れているだけでなく傾きも感じる和室と全くリノベされていない2Fの洋室x3部屋。
「民泊開業は目的ではなく手段」であったことから正直なところかなり悩みました。
- マンションと違って木造2階建てとなると冷暖房を考える必要がある
- 気になる点も嫌悪感を抱かせるほどの状態ではない
- 家賃を考えるとこの程度でも普通より上らしい(広いから?)
- とにかく物件が出てこない中、次の物件に巡り会える保証はない
最終的には「少なくてもリビング・ダイニングは文句なし、それ以外の居室は家具家電の設置で何とかなると考えられなくもない」として引き続き検討を進めることにしました。
宿泊施設運営者の判断
しかし、最終的には宿泊施設運営者からNGが出てしまいました。その理由は「除雪に問題がある地域」。このエリアは行政の除雪が不十分のため宿泊者とのトラブルが発生する確率が高く請け負えないと判断されたのでした。
このようにきっちりNOと言ってくれるところもこの業者が信頼できる理由のひとつです。だったら先に言って欲しかったという心の声もありましたが、宿泊施設運営者側としてもさらに真剣に調べた結果判明したことだったのでしょう、仕方ありません。
そこそこいいペースが話しが進んだと思ったら「振り出しに戻る」、そこから先もしばらくは真っ暗闇、何の手応えも感じない日々が数ヶ月続きました。